聖女の救済 (文春文庫) [97回参照されました]
あおみさん がこの本を手に取りました。あおみさんは、これまでに174冊の本を読み、67,684ページをめくりました。
本の紹介
100% [全432ページ]
状態 読み終わった!
2013/05/30 08:12:28更新
著者 東野 圭吾 ブックリンクされた本
-評価
★★★★★感想
ガリレオシリーズ第5段。
湯川や草薙、内海など登場する顔ぶれにも個性が際立ち、個々の意地であったり譲れない部分というのが目立ってきた。
本作では草薙と内海はそれぞれ異なる捜査経路にたつ。その中で内海は湯川を頼り、ついに物理学准教授も捜査へ関わっていく。
本作は小説ならではの読み手の思い込みを利用したトリックと、犯罪が起こることに対する先入観を巧みに操った殺人とで構成されている。
これ程までに突飛なトリックを私は見たことがない。
もしこれが現実に起こったとしたら、もちろん警察には暴けないだろうし、仮に暴いたとしてその報道を見ても俄かには信じ難い。
なぜなら犯罪は衝動的に起こるものだと信じているし、計画的にしろ短期間の出来事だと思い込んでいるからだ。
本書ではまさにこの「思い込み」を利用した。
さらにこの一冊では、著者の技術が光っている。
特に1章と2章の繋ぎ、そして1章と犯人の自供を描いた章のリンクが素晴らしかった。
加えて本書の特徴であるが、読者にとって犯人が誰か、ということは問題ではない。なぜなら1章において既に判明しているからだ。
しかしその事実を知ってなお、犯行の詳細、当日のアリバイ、トリックの不可解さが知れるたびに、本当に犯人はあの人なのか、と疑問を抱かずにはいられない。
なぜなら殺人とはこういうものだ、と「思い込み」しているからだ。
犯人である真柴綾音の殺害動機は結果、詳細には語られなかった。
それは先天的な異常を貶された屈辱なのか、親友の恋心を弄んだ復讐なのか、親友に対する罪滅ぼしなのか判然としないが、確固たる殺意というものが存在し続け、それは風化することなくあの言葉を聞くたび、より強固なものになったのではないか。
あの「子供を産めない女はいらない」という言葉を。
とにかく面白かったし、様々な憶測を立てては見事に崩壊していくという小説の醍醐味を十二分に感じられた作品であった。
文庫化しているガリレオシリーズは残り、次作の「真夏の方程式」だけだ。
これを読んでガリレオシリーズは一時休憩とする。
ネタバレ
結婚前に「子供を産めない女はいらない。タイムリミットは一年だ」と言われ、その時に殺害を決意。浄水器に亜ヒ酸という毒を仕掛け、タイムリミットまでの日々を誰にもキッチンに近付けることなく過ごした。
そんな彼女にとって犯行は家を留守にするだけでよかった。そうすれば夫が勝手に浄水器を使い、勝手に死ぬ。
確固たる殺意が仕掛けた時間の「思い込み」を利用したトリック。
読書の軌跡
432ページ | 2013/05/30 08:12:28 |
コメント
コメントするにはログインが必要です。