秘密 (文春文庫) [479回参照されました]
あおみさん がこの本を手に取りました。あおみさんは、これまでに174冊の本を読み、67,684ページをめくりました。
本の紹介
100% [全452ページ]
状態 読み終わった!
2013/12/17 01:12:15更新
著者 東野 圭吾 ブックリンクされた本
-評価
★★★★☆感想
日常に一つの非日常が混ざることで、これ程までに日常というものに違和感を抱くのだ、と驚いた。
初めの数十ページでスキーバスの転落と、魂の入れ替わりという途轍もなく非現実的出来事が起こる。しかし、それ以降は極めて現実的。
学校のテスト、宿題、運動会、文化祭、恋愛、別れ、友情…
こんな誰もが経験する出来事全てに、本書では違和感を孕ませている。
だからありふれた幸せや悲しみの側面にはいつも奇妙さがあって、読者はそんなありふれた出来事に対する好奇心を鎮められない。
そして、ラストで主人公平介の妻直子が下した決断。秘密。
これは男性読者と女性読者とで、感じ方が違ったのではないか、と思う。
私は、悲しいというよりもあまりにも寂しいと感じた。誰もが寂しい思いをする決断だったのではないか、と。
若さを楽しみたかったのか。
若い男に惚れたのか。
自分を失くしても娘として生きることが幸せだと感じたのか。
これではあまりにも寂しすぎるではないか、と感じたが、巻末の広末涼子さんによる書評を読んで、こんな感じ方があることに気付いた。
是非、同年代の異性と議論を交わしてみたいものだ。
そして、本書でも東野圭吾氏の気遣いや、繊細さ、優しさが感じられた。
それは、彼は絶対に加害者や被害者を一方的な矢印だけで終わらせないということだ。
ただ物語を盛り上げるためだけに用意した出来事ではない、と我々に告げるかのように加害者の事情や、その後の辛辣な状況、生きていることを許されていないような悲しみを必ず描く。
しかし、それらを描くからと言って被害者の面々が同情することはない。
現実的に考えて、家族を奪った加害者にどんな事情があったにせよ、憎しみや怒りが消え去る訳でもなく、許してあげようという気持ちになれる訳もなく、理解する気持ちにすらなれないだろう。
そういった現実を描くことも著者は決して忘れない。
したがって、小説にはある意味で欠かせない非現実的な出来事や事件が、彼の著書では極めて光って見えるのだと思う。
タイトルの「秘密」に隠された意味。
それに気付いた時、私は一番心が動かされた。
読書の軌跡
452ページ | 2013/12/17 01:12:15 |
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