増山超能力師事務所 [64回参照されました]
あおみさん がこの本を手に取りました。あおみさんは、これまでに174冊の本を読み、67,684ページをめくりました。
本の紹介
100% [全318ページ]
状態 読み終わった!
2013/10/25 12:24:37更新
著者 誉田 哲也 ブックリンクされた本
-評価
★★★★☆感想
久々の読了だった。
最近小説でないほかの読み物に時間を費やしていたため、約3ヶ月時間が空いた。
それでは本書の感想に移る。
本書は全7章で構成される短編集である。しかし、物語の時間軸ははっきりとしており、後半に進むにつれて事象も変化していく。
つまりただの短編集でなく、それぞれの話は繋がっているということだ。
私は第一章を読んで、正直駄作だと感じた。超能力の勝手の悪さ、物語の結末、取り扱った事案。それらが趣味と合わず、なんだこれは、と思ってしまった。
しかし、さすがに読まないのは勿体無いと思い、渋々二章へと進んだ。
するとどうだろう。急に物語の深み、登場人物の人間さ、物語としての面白みが増したのだ。
もしかしたら本書は、刊行される以前、例えばどこかの新聞や雑誌で連載されていたものが一冊になったものなのかもしれない。
だとしたら著者としても一章を書くにつれて次第にイメージが深まってきたのだと考えられる。
とにもかくにもそこからは非常に楽しんで読むことができた。
念動力や念写、媒介感受などの超能力をもつ超能力師たち。彼らが様々な事案に対して探偵として働く。一見すれば超能力師なんだからどんな問題でも、容易く解決できるのではないかと思うが、実はそうではない。
本書の面白さは間違いなくそこにある。
とどのつまり全ての解決すべき問題は、人間と人間との心が関わっているのだ。そんな複雑な問題に対して超能力ができることなんてたかが知れている。
ユニークな人物たちが勤める増山超能力師事務所の所長、増山圭太郎はこんな言葉を残している。
「超能力なんてそんな便利なものじゃない。」
現実にそんな能力を持ってないからこそ憧れるが、本書を読めばもしかしたら増山の言う通りなのかもしれないと思う。そんな特異な力を持つために、人一倍怪しまれたり、君悪がられたり、悪者扱いされたりする。
彼らも後々そんな面倒があると知っていたなら、こんな能力を望まなかっただろう。
しかし、彼らはそれらの苦渋を味わいながらも自身の能力を社会貢献に役立てようとした。
ただ単に金持ちになろうとすれば容易になれたというのに。彼らはこれまで虐げられてきた一般人や社会に認められる道を選んだのだ。
そこにこそ、彼らの人間としての素晴らしい部分があると私は思う。
当初は表紙が「The world of golden eggs」と同じ描き方のキャラクターというだけで購入したが、思いがけない良作であった。
ただ少し、物語を盛り上げるために無茶な設定をしていたことが評価を一つ下げる要因となった。
例えば、半陰陽(いわゆるふたなり)の姉妹が家庭にいることや、同性愛者や性同一性障害者が複数現れること、である。
読書の軌跡
318ページ | 2013/10/25 12:24:37 |
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