きらきらひかる (新潮文庫) [60回参照されました]
とくこさん がこの本を手に取りました。とくこさんは、これまでに46冊の本を読み、11,505ページをめくりました。
本の紹介
100% [全213ページ]
状態 昔読んだ
2013/06/29 21:35:47更新
著者 江國 香織 ブックリンクされた本
-評価
★★★★☆感想
ホモの夫とアル中の妻の話。
これだけ見ると一体どんな仮面夫婦かと思ったら、二人とも、確かにお互いのことを想い合ってる。
でも、二人ともどこか捻れて歪んでしまって、どこか見当違い。
話の構成は短い章に別れていて、妻の笑子と夫の睦月の視点、交互に描かれる。
ひとつの視点だと片方の考えに偏りがちなのが、もうひとつの視点で第三者的に片方を描くことで確かに彼、彼女が異常であることがわかる。
だからこそ、ふたりの見当違いっぷりが痛い程わかる。
笑子の異常さはそれがアル中からくる異常なのか、精神に異常をきたしているからなのかはわからないけど、笑子の考えは私にはちょっと理解できない。
でも、笑子の感じる睦月へのもどかしさはわかる気がする。
このままでいい気持ちもわかる気がする。
情緒不安定で感情の起伏が激しい、異常な笑子はすごく危うい。けど、その危うさは確かに笑子を魅力的に見せている。
一章は笑子の視点で描かれていて、そこから見える水のような睦月は、すごく魅力的。
何を考えているのか分からないけど、睦月の視点で彼の思考を見てみると笑子に比べれば睦月はずっと普通に見えるけど、その普通さは睦月の「誠実さ」からくるもので、やっぱり彼もどこかおかしい。
睦月の望んでる関係は、彼の愛する部屋みたいに整然としすぎて、異常だと思った。
話のラストは結局、紺も加えた三人の生活が始まることで決着をつけ、ふたりが望んだ「ずっとこのまま」はふたりがさんにんになっただけで叶ったことになる。
崩壊は、予感だけちらつかせて終わったので、物語の中ではハッピーエンド。
それが少し物足りなく思う一方で、どこか現実離れしている危うい岸田夫妻の部屋が守られた事に安堵した。
読書の軌跡
コメント
コメントするにはログインが必要です。