真夏の方程式 [264回参照されました]
あおみさん がこの本を手に取りました。あおみさんは、これまでに174冊の本を読み、67,684ページをめくりました。
本の紹介
100% [全463ページ]
状態 読み終わった!
2013/06/28 15:42:46更新
著者 東野 圭吾 ブックリンクされた本
-評価
★★★★★感想
「答えを出すためには、自分自身の成長が求められている場合も少なくない」
これは作中で湯川が、玻璃が浦にて出会った恭平という少年に向けて言った言葉だ。
小学5年生に向けた言葉ではあったが、まだまだ幼さの拭いきれない私にとっても大切な言葉となった。
これから社会に出るにあたって様々な困難や障壁に道を塞がれることだろう。しかし、私の周りにも湯川ではないが力になってくれる人物が多々いて、自分自身の成長もまだ限界を知ってはいない。
要するに、これから、なのだ。
本シリーズは続編を出版するごとに前作の面白さをどんどん上回っている。本作も例外ではない。
前作の「聖女の救済」ほどのトリックに対する驚きはなかったが、複雑な人間関係の繋がりや湯川と少年の会話、過去から現在までさらにはこれからも隠したいとされる秘密。これらの作品を盛り上げる要素がふんだんに詰め込まれていて、飽きることは愚か、頁を捲る手を休めることすらなかった。
愛する者の為、自ら罪を被る。
そんなことが果たして自分にできるかはわからない。
しかし3作目「容疑者xの献身」では石神が好意を寄せる女性の罪を被り、本作では仙波が娘の罪を自らに着せた。
自ら罪を被ることはできるかわからないと言ったが、これら2つの愛情を理解することは何ら難しくない。
片や恋人に対する愛情、片や娘に対する愛情。この2つの愛の形は違えど、自分を犠牲にしてでも大切な人を守りたいという気持ちは同じだ。
自分がいま幸せなのは、もしくは生きていられるのは彼女らのお陰なのだから、と。
しかし、その反面で罪を諭せる人間にならなければ、と思う自分もいる。
一緒にそれを背負っていくから、一緒に困難を乗り越えよう、と。
湯川は恭平に対してこちらを選んだ。
罪を背負うことは、諭すことに比べれば簡単なのかもしれない。
しかしそこにある愛情は紛れもなく、唯一無二のものであると思う。
ネタバレ
玻璃が浦という大変海の綺麗な土地にて男性の死体が見つかった。湯川はその土地の開発グループとして来ていた。亡くなった男性は宿の老朽化により一酸化炭素中毒で死んでしまい、宿の評判が下がるのを少しでも留めようと、宿主と妻、ならびに彼らの娘の友人が死体を運び出し海岸に投げ捨てたのだ。亡くなった男性は元捜査一課の者だった。なぜそんな人物がこの土地に?そこには悲しい過去が関係していた。
宿主の妻、節子は昔仙波という男と一度だけ肉体関係をもった。その後、いまの宿主と結婚したのだが、お腹には既に成美がいた。成美が仙波の子だということは節子と仙波しか知らなかったのだが、ひょんなことから節子の元同僚に知られてしまった。それを口実に節子に金を無心しに来たその同僚と成美が出会ってしまう。そこで成美に「あなたはいまの父の子ではない」と告げる。成美は気が動転して店にあった包丁で女を刺し殺す。それを知った仙波が自ら罪を被り、塚原という刑事に捕まる。しかし、塚原はその事件に違和感を抱いていた。何か真相が隠されている、と。塚原は釈放された仙波を見つけ出し、ついにその真相を知る。病気によって死が間近に迫っている仙波に、娘の姿を見せてやりたいと、塚原は成美のいる玻璃が浦に向かう。そこで成美のいる宿に泊まるのだが、宿主である父は塚原こそが本当の成美の父親だと勘付いており、十数年経ったいまになってその真相を晒されると勘違いした。つまり、平穏ないまの生活が壊されると思ったのだ。そこで泊まりにきていた甥の恭平に頼み煙突に濡れた段ボールで蓋をさせ、ガスが漏れやすい部屋に塚原を案内し、意図的に殺したのだ。
塚原こそが海岸で見つかった死体の本人なのだ。
節子と仙波の悲しい過去
実の父ではないと勘付きながらもその事実を否定してきた父
自らの罪を実の父に被せた成美
冤罪で捕まえた仙波に贖罪しようとしていた塚原
色々な悲しい過去や感情が、またしても悲しい出来事を生んでしまったのだ…。
読書の軌跡
199ページ | 2013/06/27 03:08:59 | まさか湯川と子どもの共演、協力が見られるとは。宿主の家族が不可思議な事件にどう関係しているのか、これからが面白いところだ。 |
463ページ | 2013/06/28 15:42:46 |
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