愚行録 (創元推理文庫) [222回参照されました]
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本の紹介
100% [全320ページ]
状態 読み終わった!
2010/11/14 00:57:11更新
著者 貫井 徳郎 ブックリンクされた本
-評価
★★★★☆感想
一家惨殺事件の被害者家族に関わる複数の人たちへのインタビューと「妹」が「兄」に向けた語りだけで構成された作品。
インタビューだけで構成された作品だと、宮部みゆきの『理由』とか恩田陸の『Q&A』とかが思い出されたけど、この作品では誰もが羨むような家庭に見えた被害者夫婦に対し、それぞれの思い出を語りつつもその裏には人間の厭らしさが見え隠れして被害者たちの負の部分を浮き彫りにしていく。それも口語体だけに、ある意味生々しくもあり、同時に語り手の愚かさや虚栄心も目のあたりにすることとなる。
著者自身が「最悪に不快な読後感を残す話」というだけあって、誰しもが持っているであろう「嫌な部分」にフォーカスしながらもストーレートな表現は一切せず、グロテスクな表現も無しに、語り手から湧き出る悪意によってじわりじわりと夫婦の負の貌が浮かび上がってくる仕組みとなっている。表面的には平穏な人間関係も一皮剥けばそれぞれの身勝手さや思い込みが混じって醜さが自然と滲み出てくる様を“語り”という形式で見事に描写し、最後には「完璧で幸せな一家」といった当初のイメージを完全に粉砕してしまう。
更に被害者夫婦に対する描写だけには飽き足らず、追い打ちをかけるような「妹」の独白。ここでも彼女に関わった人々と彼女自身の愚かさとが浮かび上がるように描かれていて、正にタイトル通りの『愚行録』を成しえている。
…確かに後味の悪い作品だ。。。
とは言え、本人の意図を見事に表現していくこの文章力はスゴイかと。。最後にオチはあるものの、驚くような仕掛けも盛り上がるような謎解きもないのだが、思わず引き込まれてしまった。
ちなみに、最初の1ページ目の意味が最後が分かるあたりは貫井さんらしい表現だ。。。
読書の軌跡
91ページ | 2010/11/10 01:33:27 |
166ページ | 2010/11/11 01:43:17 |
242ページ | 2010/11/12 00:57:38 |
320ページ | 2010/11/14 00:57:11 |
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