近代国家とキリスト教 (平凡社ライブラリー) [34回参照されました]
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本の紹介
100% [全310ページ]
状態 昔読んだ
2010/09/26 11:39:15更新
著者 森安 達也 ブックリンクされた本
評価
★★★★★感想
本書は、「近代におけるキリスト教の命運」、即ちキリスト教と近代国家の関係を、宗教改革、フランス革命、ロシア革命を主なテーマとして論じています。
宗教改革の背景には、ドイツにおける領邦国家の存在があり、ローマ・カトリック教会の影響力の排除と教会財産接収の利益が、ルター派を支えていたのでした。一方、対抗宗教改革においても、絶対王政国家は、カトリック教会と結びつつも、やはりローマからの独立性を高める行動をとっていました。
フランス革命は、国家とカトリック教会の全面的な「闘争」となりました。フランス革命により、世俗国家、聖俗分離の考え方が広まり、キリスト教は公共的な場での力を失います。この聖俗分離の考えは、日本人には理解しにくいのですが、イスラーム教徒移民に対し、公立学校におけるベール着用の禁止というかたちで、現在も国家の強い要請となって現れています。
ロシア革命は、キリスト教にとってより危機的なものでした。攻撃的無神論を党是とする共産思想の影響により、ロシアばかりではなく広くヨーロッパにおいて、キリスト教の影響力は低下しました。
このように、近代国家の歴史はキリスト教との「闘争」の歴史であり、世俗国家、聖俗分離は、近代国家の基盤的な思想となっています。
一方守勢に回っていたキリスト教(や他の宗教)ですが、近年になり、ファンダメンタリズムが勢いを増し、世俗国家に対する挑戦を挑んでいるようです。「神の復讐」が始まったのかもしれません。
以上のように、本書は、現代の日本人にはピンと来ない国家と宗教の関係を深く考えさせるものです。内容はアカデミックですが、表現は平易でけして読みにくくはありません。「宗教」というものを考える上で、貴重な一冊だと思います。
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