容疑者Xの献身 (文春文庫 ひ 13-7) [719回参照されました]
あおみさん がこの本を手に取りました。あおみさんは、これまでに174冊の本を読み、67,684ページをめくりました。
本の紹介
100% [全394ページ]
状態 読み終わった!
2013/05/12 21:22:12更新
著者 東野 圭吾 ブックリンクされた本
-評価
★★★★★感想
やはり素晴らしい作品だった。
これはガリレオシリーズの名作ではあるが、これまでのガリレオシリーズとは内容が異なる。従来のはオカルト現象のようなものが事件に少なからず関わっており、それを物理学准教授の湯川学が解き、事件の全体像が浮かび上がる、というものだった。
本作にオカルト現象はない。
だからこそなのか、登場人物の性格、思考が詳らかに語られ、事件の複雑さもこれまで以上に増し、一つの優れた作品となっている。
石神が成したことは正しいことではない。しかし、彼にはこうするしかなかった。
愛の言葉を伝えることも、彼女に正義を教えることも彼にはできなかった。
ただただ、花岡母娘への感謝の気持ちとして殺人隠匿、ならびに殺人の罪を背負ったのだ。
これは「愛」なのか、「恩」なのか。
湯川のこれまで見せなかった苦しく寂しい表情。決して悲しいだけでなく、世に1人しか存在しない好敵手を失った虚無感、そしてそれはもう決して覆ることも覆すこともできないという虚無感。
事件というパズルのピースが全てはまったとき彼はさぞ辛かっただろう。
また、それは石神も同じだ。
緻密に考えた計画は成功したが、彼が惚れた女性の優しさには敵わなかった。ラストで靖子が警察へ自首にきたときの石神の感情は計り知れない。
自分の身を滅ぼしてまで必死に守ってきた。そして守り抜いたと思った。
でも来てしまった。
この作品で浮かばれる人間はいない。
これは悲しい事実であるとともに、殺人というこれ以上ない罪の大きさを物語っている。
人が一人死ぬということはこれ程までに周囲の人間を巻き込み、暗闇に陥れるのだ。
石神の考えた、盲点をつくトリックに気付けたものはいないだろう。
殺人を隠すための殺人。
何とも悲しい物語だった。
本作を読んだ人には是非、映画を見て欲しい。
小説以上に感情が揺さぶられること、間違いなしだと思う。
読書の軌跡
394ページ | 2013/05/12 21:22:12 |
コメント
コメントするにはログインが必要です。