日本外交官、韓国奮闘記 [280回参照されました]
Popoさん がこの本を手に取りました。Popoさんは、これまでに198冊の本を読み、56,501ページをめくりました。
本の紹介
100% [全198ページ]
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2020/05/30 12:57:11更新
著者 道上尚史 ブックリンクされた本
-評価
★★★★★感想
(p47)第二次大戦後の日本人は、愛国心とかナショナリズムに背を向けるあまり、他国のそれにも理解が及ばなくなってしまったきらいがある。
(p53)一般国民が自国と他国、特に隣国の歴史に無知であれば、実は外交上も困る。合理的な外交政策の形成、実施がスムーズにいかないことがある。
(p62)ライシャワー元駐日大使はこう言った。「(千九六〇年代までは)日本人は、アメリカについて、帝国主義だとか何とかひどい事を言っていたものです。アメリカがもしそれを真に受けていたら、激怒するようなことばかりだった。でも、その頃は日本は小さくて弱く、たいして重要ではなかったので、気にしなかったんですよ。(中曽根発言は)日本人が、日本語という垣根の中で、自分たち同士だけでしゃべることに慣れていることの例証ですよ。それが、外の世界にも聞こえ、波紋を起すかもしらないという事実に、慣れる必要がありますね」…一九六〇年代までの日本では、アメリカを批判するのはいわば当然であった。「反米」は、知識人、学生の使命であった。その米国批判の内容が正確でなければならないとか、相手にも通じる論理でなければならないという発想は乏しかった。米国が逆に怒って再批判を加えてくるなどとは夢にも思わなかった。しかし今はこの「甘え」は許されない。
(p65)問題なのは、日本人が自らを世界に比類なくユニークと考えていることだ。日本人はユニークであることに私は同意する。だからどうしたと言うのだ。ドイツ人もユニークであり、他の民族も同様にユニークなのだ。また、日本人は、自らの歴史から否定的な面をぬぐい去ろうとする傾向があるようだ。世界では自らに批判的なことが称賛されるのだから、これは不幸なことだ。(ジョン・ダワー教授)
(p91)自分の過去をゼロと見る、ある意味の「小国意識」は、自国とが他国に影響を与えたことや、その責任から目をそらしやすい。これは、当時致し方ない選択であったとしても、後の時代の日本人が対価を払うべきである。
(p106)韓国人の多くは日本が得意な緻密な議論、法的議論をしてもそっぽを向いている。わかりやすい「本質論」をしてはじめてこっちを向く。…大上段の総論を重視し実務的な各論を軽んじる韓国、緻密な各論の展開を重んじ、総論にあまり注目しない日本という図式になろう。韓国では、与野党や思想の差を問わず、世の中はすべて「大国の打算と陰謀」や「有力者グループの指先」が動かしているのだ、人権や平和や理想論は、ごまかしに過ぎない、ともいうべき世界観が根っこにある。
(p117)記憶は個人の記憶でも、ナショナルな記憶でも、非常に単純な物語が欲しいのです。これはよかった、悪かった、と白黒の区別を好みます。アメリカの元軍人は、原爆が戦争を終わらせたと当時考えていて、それが今でも記憶に残っているのです。…しかし歴史は単純な物語ではすまない。歴史は複雑な話、まとまりそうもない事情、事実をできるだけ多角的な角度、色々な観点から説明するものです。
(p173)日本側に反省、わきまえは必要だ。しかし、黙っていては決して相互理解は深まらない。ギャップが拡大するだけだ。「言いたいことを言う」のでなく、「言うべきことは言う」必要がある。相手への理解と自制も必要である。しかし、日章旗を床にしかれたり、(銀行にて、お客さんが踏まないと入れなくさせられた事案があった)説教された上に道を間違われたりして、黙っているのが正解とは思えない。それが、相手を尊重する姿勢だとも思わない。
(p174)「良心派」の第一の短所は、安保無視、幻想的なひとりよがりの一国絶対平和主義である。平和への思いが強いことはよいことだ。問題は、第二次大戦後も引き続き多発する戦争なり、イデオロギー対立なり、現実の国際情勢、安全保障、ひいては人間への洞察と把握が余りに弱かったことである。…平和という言葉を唱えれば平和が来るのでなく、平和実現のためには、事実をごまかさず、冷厳に見据え、地道な作業をつみ重ねる必要があるのに、かかる知的葛藤を回避し、仕事を怠ったのである。平和を追求し確保する姿勢が実は弱かったのだ、と皮肉でなく思う。
(p175)しかし、良心派にも、別のアジア軽視がある。徹底して対話を避けてきたことである。つまり、著作でもシンポジウムでも、韓国人の、誤解や無知に基づく日本批判、自国の事情に無反省で相手のみを批判する姿勢に対し、日本の「進歩的な良心は派」は説明をせず、反問や批判をしなかった。
(p177)『ナショナル・ヒストリーを超えて』を読んだ。…内心期待したが、水準の低さに驚き、失望した。…この本の決定的な欠陥は、意見の異なる人との対話、議論がなく、知的葛藤がない点だ。対立する陣営や議論の背景から何がしか部分的真理を抽出し、自陣営の短所を補うという姿勢がない。
(p179)本書で指摘した、過去の問題、安保の問題は、日韓二国関係という枠を越えて、日本外交の力量、東アジア協力、国際社会での日本のイメージという点に密接にかかわる。日本がこれらの基本問題につき十分議論し、わかりやすい説明ができるか否かは、何も対韓国だけの問題でなく、国際社会の中での日本の説得力の問題であり、世界各国の関心事なのである。
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