仕事に効く教養としての「世界史」 [262回参照されました]
Popoさん がこの本を手に取りました。Popoさんは、これまでに198冊の本を読み、56,501ページをめくりました。
本の紹介
100% [全344ページ]
状態 読み終わった!
2020/05/28 10:50:12更新
著者 出口治明 ブックリンクされた本
-評価
★★★★★感想
(p165)ローマ教皇の力の源泉は何かと言えば、資金と情報だと思います。…この年(聖年)にローマに巡礼すると特別の赦しが与えられるため、世界中から信者がお金を持ってローマに集まってくる。…ローマ教会は13世紀に、近くの教会で司祭に罪を告白したら許されるという仕組みを、制度化しました。…耳聴告白が制度として固まってくると、その地方における怪しい出来事はすべてわかる。たとえば、陰謀は一人ではできないでしょう。必ず複数になる。それぞれの人は、その陰謀について全体像は知らなくても、それぞれ自分の知っていることがある。それを一人ひとりが話すのを聞いて全部の情報を足し合わせれば、それが円になって全貌が見えてくる。
(p222)必要なものは、国王であってもよそから持ってくる。多少は理屈に合わなかったり、見てくれは悪くても、国が豊かになることを最優先させる。そういうイングランド伝統の柔軟な発想が、「ウィンブルドン」現象と呼ばれる戦略を生み出したのです。世界で一番有名なウィンブルドンのテニス大会で、英国の選手はなかなか勝てない。それでも、それを英国で開催しているから、世界中から人が集まってきて、さまざまなプラスアルファの利益が見込める。それでいいじゃないか、という発想です。
(p283)フランス革命やアメリカ建国の精神に対する反動として懐疑主義が生まれてきます。…パークやトクヴィルの保守主義とは何か。…「人間は賢くない。頭で考えることはそれほど役に立たない。何を信じるかといえば、トライ・アンド・エラーでやってきた経験しかない。長い間、人々がまあこれでいいじゃないかと社会に習慣として定着してきたものしか、信ずることができない。」…「そうであれば、これまでの慣習を少しずつ改良していけば世の中はよくなる。要するに、これまでやってきたことでうまくいっていることは変えてはいけない。まずいことが起こったら、そこだけを直せばいいだろう。」こういう考え方が、バークやトクヴィルの「保守」の真の意味だと思うのです。
(p296)いまでも英国には、成文の憲法がありません。長い伝統と知恵があったからです。巧みに灰色の効用を駆使してきたと思います。しかしアメリカは、伝統も慣習も何もないところからスタートして国をつくらねばなりませんでした。世界のいたるとのろから、さまざまな過去をもつ人々がやって来てつくった国です。理性と理屈で、憲法をつくり契約をして建国した人工国家です。ここでは、灰色はなかなか通りません。…世界の警察官にアメリカがなっているのは、もともとアメリカ人は保安官がいる社会で生きていましたから、別にそれほど違和感がないのだと思います。以上の歴史をヨーロッパの人は、よくわかっている気がします。アメリカは平たく言うと、おだてて頑張ってもらうのが一番である。あまり厳しく言うと閉じこもって引きこもってしまい、それだと世界のためにならないから、ある程度はおだてて、出しゃばらない程度に、保安官をやってもらおう。それが一番いいということを、ヨーロッパの人はよく認識しているように思います。
(p310)彼(林則徐)はウルムチに去るとき、魏源という友人の学者に集めた洋書をすべて預けます。そして彼に大略次のように依頼したのです。「私は外国語が読めない。けれどもこれらの文献に書かれている知識は、耳から聞いただけでもずいぶん役に立った。…これらの洋書を漢字に翻訳してくれないか。きっと後世、西洋に立ち向かう誰かの役に立つと思うのだ」この本は、日本でもたいへん有名になりました。佐久間象山や吉田松陰など、明治維新の志士たちの経典になったからです。維新の志士たちは、この本で世界の現状や列強のアジア政策をも学んだのです。明治維新は、ある意味では、林則徐のリベンジであった、という人もいます。
(p329)現在の日本のように周囲のすべての国と、領土紛争を抱えている国は、歴史上ほとんど存在しないのです。…日本の場合は、たまたま大陸との間に海があるので、けっこう無頓着です。
(p330)日本の戦後は特殊な世界であったと、僕は思っています。アメリカとソ連の対立軸に、蒋介石と毛沢東が絡み、世界の大きな歴史の流れの中で、幸運の女神が五回くらい連続してウィンクしたのが、戦後の日本だったと思うのです。
(p332)歴史を学ぶことが「仕事に効く」のは、仕事をしていくうえでの具体的なノウハウが得られる、といった意味ではありません。負け戦をニヤリと受け止められるような、骨太の知性を身につけてほしいという思いからでした。そのことはまた、多少の成功で舞い上がってしまうような幼さを捨ててほしいということでもありました。「自分が生まれる前のことについて無知でいることは、ずっと子どものままでいること」(キケロ)なのです。
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