中島誠之助先生、日本の美について教えてください。 [401回参照されました]
Popoさん がこの本を手に取りました。Popoさんは、これまでに198冊の本を読み、56,501ページをめくりました。
本の紹介
100% [全254ページ]
状態 読み終わった!
2019/04/18 09:23:11更新
著者 ブックリンクされた本
-評価
★★★★★感想
(p27)ほんとうの美しさがそなわったものは見飽きないんですよ。…美しさまでそなえたものであれば、しばらくして自分の心の中でその美というものがまた変化を遂げているんです。…美というのはリピートの心を起こすんです…未完成なものだから、鑑賞する人の心がそれを美しくしていくんです。
(p29)きれいなものがつくれるっていう基礎がしっかりしてて、さらにそこから一歩進んで美しいもの(不完全なもの)をつくれるようになったとき、初めて一人前っていえるんじゃないですかねえ。
(p40)見られる位置や方角というものが決まっているものは、その位置や方角で見るのがいいんです。そのベストの鑑賞位置を見つけることも、よい鑑賞者の条件です。
(p51)では、満月には見向きもしないかといったら、そうではないんです。完全なものの美を知らなければ、不完全なものの美もわからない
(p65)つくった人がいて、発見した人がいて、それの心を感じとって次から次へと受け継いできたっていう長い流れが必要なわけなんですねえ。
(p67)ほんとうはコピー品なのかもしれないものでもね、まずきれいなものであれば、持ち主が愛情をもって所持することで、それが代々伝わっていくことで、これもまた美しくなっていくんじゃないかと思うんです…そのものの最終的な価値は持ち主が決めるものですから。
(p135)中国に毛沢東の政権が成立したときには、簡略体というものをつくっていますね。あれは民衆の識字率を上げるという表向きの理由はあるわけだけども、やっぱり文字を読めるようになった民衆に過去の文献の意味を理解させないためでもあるんですよ…印刷技術ができて書籍が広く普及してしまうと、焚書は無理なんです。それで毛沢東は、文字を奪ったわけなんですねえ。
(p141)お肉をおいしそうに照らす光と野菜をおいしそうに照らす光は違います…最初から名品だからということでね、どう見せても美しいだろうなんてのは、とんだまちがいであって、そのものの魅力をよく理解できていないんじゃないかと思うんですよ。美しいからこそ細心の配慮をしなくてはいけないんです。
(p143)物質的にパーフェクトだというのと、精神的にパーフェクトだというのは、ともすれば、正反対の意味にとらえられかねないわけなんです。
(p150)室町時代の後期に勃興してきた町人層も、お金だけはあるわけなんです。でも、ものがない。天下の唐物はすべて、旧来の権力者の手もとにおさまってしまってますからねえ。だから、価値革命が必要だった。
(p164)茶碗であれば、抹茶を点ててそれで飲む。湯呑であれば、毎晩それで番茶を飲む…持ち主の特権は、この育てていく楽しみなんですよ。…名品というものはね、やっぱりそれを愛玩してきた人の知性と感性によって磨かれて、これからも長く伝えられていくもんだろうと考えています。…ものの命というものは、捨てないかぎり、壊れないかぎりは永遠なんですから。その命を磨きあげて将来に伝えていくかってことが、やっぱり美を愛する者の最大の仕事だろうというふうに考えるわけなんです。
(p173)個人の見方や愛着と、実際の歴史とか交差したところに美意識がある。…あなた自身がものに新しい価値を加えることだってできるんです。…ご自身でお調べになったことをまとめて箱の中にいっしょに入れておくとかね。ふと浮かんだ俳句を書いて入れておくとかね。あなたの美意識や歴史認識が正しければ、それは将来の付加価値になるんです。人から、あるいは本で、「これはいいものだよ」って言われたときに、どうしていいものなのかっていうのを考えるのは、あなた自身なんですよ。だけども、あなたに考える力がなかったらば、そこで終わってしまう。…これがほんとうの宝の持ち腐れってものです。
(p180)ほんとうの禅僧じゃない人が描いた禅画っていうのはね、他人に見せようとか、なにかそこに写そうという気持ちが前面に出すぎている。こうしたら、もつとよくなるんじゃないかという作為がある。作為がないとね、かえって余白の美が生まれるんです…修行をなしえた人の精神力が表わされているんですよ。職人の技術や経験、手慣れは関係ないんです。たとえヘタであっても、心が引きつけられる禅画はあるわけなんですねえ。こういうものと対面していると、自分の中の人間性が問われるような気がしてきます。
(p193)まったく自分のオリジナルというわけではなくてね、過去の達人の作品に素直にならうこと…和歌なら和歌の道、俳句なら俳句の道、その道の偉大な先人たちに対する敬意があって、その世界観を広げていこうという意欲が表れているかどうかが大切であってね、個人のオリジナリティありきという考え方とは別物なんです。それには、その本歌の精神たるやが何かということをよく理解していなくてはいけませんねえ。
(p195)(写しの)次の段階として新しい時代にそれを問いかけていくには、新しいものを創造しなくてはならない。(注:現代の状況のもとでも意義があるように手を加えるイメージ)これをやりませんと、さらに先には残っていかない。またすたれてしまうんですよ。ここまでやって、伝統を守ったことになるんです。
(p220)金は明るいところに置くと、あまり美しくないですね。すこーし暗いところに置いてやると、妖しいような重いような美しさってものが現れる…昔の日本人は、茶人も、能楽師も、絵師もねえ、みんなそういう金の使い方を知ってたんですね。「金を使ったから豪華だ」というのではないんですよ。
(p231)当時の人の美意識にはそぐわなかったんです。それを後世の人が見たら美しいと感じる。これはどうしてだろうと不思議に感じたことはありませんか…「あれが美の原点だったんだ」ということを、あとになって理解できるようになったからじゃないですか。
(p235)中国古代の青銅器…あれはやっぱりひとつの権力や権威の象徴であってね、当時においても、美しいというよりも、きれいの部類に属していたんじゃないか。って言いますのはね、その裏には人間が犠牲になって血が流されていた歴史がありましたから…当時は人間とは反対にあるもので、容易に近づくことのできない畏怖の対象だったんじゃないでしょうか。
(p239)話題だから行ってみようじゃダメなんですね。美しいものをこの目で見たいというのでも、まだ何か足りない。行って、見て、感じてから、かえってほしいんです…あの仏さまは、「この土地のこのお堂で信仰され守られてきたんだ」ってことを強く実感することができますねえ。
(p240)原点を見つけて、「じゃあ私もその原点にならってやります」と言ってできるものじゃない…なぜなら自分とその原点が一本のレールでつながっていないから。これがね、何百年も一子相伝で技術も精神も引きついできた家の人であれば、つくれるかもしれません…いま自分がやっていることはね、これからの時代に与える栄養なんです。後世の人々に対して向けられたものなんですよ。自分のやっていることが将来の原点になるかもしれないということであってね。現時点において自分が原点になることではない…「日本人の美意識」なんて言いますとね、なんだか保守的なテーマのように思われるかもしれないけど、その真逆なんです。たいへん革新的なテーマなんですよ。
(p244)歴史の中で積み上げられてきたものを咀嚼して、自分の第一歩を踏み出していく…だから後世に生きる人ほどね、ウエイトは重くなるんですよ。
(p245)普通の社会生活がピシッとできてて、そのうえで自分の好きな分野、自分の求めてる分野に進んでいってる人が、やっぱりその道でやっていけるんじゃないですか。いまはそういう時代なんです。
(p247)言えることはね、無理をしちゃいけないんです…自分の心に素直じゃなきゃいけないですね…でもねえ、じゃあ、自分が好きなものだけを愛でていればいいのか…すくなくとも大多数の人が支持しているもの、何百年もいいとされてきたものには、相応の価値があるもんでしょ。…たとえそのときは自分の好みてはなくても、いいものに触れていくっていうこと、これがいちばん大切なんです。すると、対人関係でも、いい人にふれていくわけなんですよねか。いい人と触れていると、おのずと自分の感性が高くなっていく。人間ってのはねえ、自分と同じ程度の感性から上は見えないものなんです。下は見えるんです。すると下ばっかり見るようになる。いつまでも向上しませんねえ。
(p250)白金台の畠山美術館(行ってみたい)
(p254)じゃあ、すきなものを集めれば、それで成功なのか。とんでもありません。あなたの感性しだいです。あなたの感性を磨けば、それだけすぐれたものが入ってくる。じゃあ高くて買えなければどうしましょう。やめればいいんです。無理することはないんです。たしかに多少の無理は必要です。自分の身の丈にあわせながら、すこしずつ背伸びしていくことは必要です。だけども自分の生活を破壊してしまうような極端な買いものはしてはいけません。
読書の軌跡
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