談志が死んだ [189518回参照されました]
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本の紹介
100% [全440ページ]
状態 昔読んだ
2011/05/14 01:57:53更新
著者 立川 談志 ブックリンクされた本
評価
未評価感想
「談志が死んだ」ので改めて読み返した。談志の生の高座は聴いたことはないので、本来談志を語る資格はないのかもしれない。ただ、CDは聴いているし、談志の書籍やその他落語関係の雑誌などで、談志の発言はたくさん目にしており、談志の死に思うところがあるので、備忘のためコメントを残す。自分が談志について受ける印象は、以下のとおり。
1 志ん朝を人物描写ができていないなどと酷評したが、結局のところ、志ん朝にコンプレックスがあった(志ん朝死亡時のコメントに顕著)。一方、志ん朝は談志の存在をそんなに気にしていない。
2 寂しがりやであり、自分を奉る弟子(志らく・談春など)、評論家(吉川潮)、有名人(たけし、高田文夫、爆笑問題)などを侍らせて、終始、自分の存在確認をしていた。
3 師匠である小さんには、甘えすぎるほど甘えすぎていた(「自分に頭を下げて協会に戻ってこいといわなかった小さんが悪い」との発言など)。
4 破天荒な「志ん生」に対する憧れがあり、高座をすっぽかすなどの行動をとったが、志ん生が無邪気であるのに対し、談志は頭がよすぎるので、志ん生とは違い、自己顕示欲の発露にしかならなかった。
小三治が談志の死にあたってNHKに述べているコメントは、小三治らしい率直さと含蓄があり、「なるほど」「さすが小三治」といいうるものであり、まさにあの発言に談志のこれまでが集約されるように思った。小三治が述べているように、談志は、他人の落語や落語に対する価値観を認めていなかった。「落語は業の肯定である」「イリュージョンである」と述べ、これに反する落語は、徹底的に攻撃した。それは落語に対する談志の尋常ならざる愛がさせたものであろうが、その点が、談志について自分が一番違和感を感じる部分である。落語はもっと懐の深いものではなかろうか。
というわけで、自分は、率直なところ、談志に対して肯定的ではない。ただ、文筆家としてあれだけの書籍をものにし、古い落語界の様子、特に古い色物や芸に暖かい目を向け紹介しようとしていた功績は素晴らしい(「談志楽屋噺」「談志百選」)。志の輔・談春などの弟子を育て上げた功績もたいしたものである(志ん朝・小三治はなしえていない)。また、談志が、否定的なものであれ、肯定的なものであれ、その胸を騒がせ得るほどの存在感を持った奇才であることも、疑いようがない。それらの点において、談志が亡くなったことは残念に思う。
それにしても、小林信彦は、談志の死にコメントしないのだろうか・・・。
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