棋士という人生: 傑作将棋アンソロジー (新潮文庫) [79331回参照されました]
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本の紹介
100% [全371ページ]
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2016/11/07 22:02:54更新
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評価
未評価感想
棋士に興味がある。ということで、発売日近くに買っていて、興味のあるところを拾い読みしていたところ、例のカンニング騒ぎが持ち上がって、どうにもこうにも落ち着かず、放り出していたのだが、本日改めて通読。
「聖の青春」で元将棋世界編集長の大崎善生選だが、作者は、棋士、作家(村上春樹や坂口安吾も)、詰め将棋作家から、対象は無名棋士、奨励会、アマチュアまで幅広く、読んでいて楽しい。全26編。
しかし、通読してみての核は、芹澤博文であると思った。凡人としてのすごみを持つ中原誠を語る沢木耕太郎の「神童、天才、凡人」。中原の兄弟子であり、才能に恵まれながら中原の後塵を拝し、酒・賭博におぼれ、最後は棋界の鼻つまみ者となる芹澤博文自身による「忘れえぬ人・思い出の人」。両極端ともいえる中原・芹沢の師匠である高柳敏夫による、芹沢の弱さ、愛すべき点を含めて、淡々としかし思いをもって語る「愛弟子・芹沢博文の死」。最後に、博友であった色川武大の痛ましく切ない鎮魂歌「男の花道」。
心に残った色川の一文。「私の内心としては、遊び友だちのつもりではなかった。芹さんは、そのようなことを一言も漏らすような人ではなかったが、胸の中の深いところで、なにかを深く決意してしまったようなところがあり、私はそれを漠然と感じていて、しかし、男が深く深く決意してしまったようなことを翻意させる手だてがみつからず、ただただ眺めているきりだった。」「その塊がなんであったか、私に断定するすべはない。かりに、死にたい、死ぬということだったとする。それでも私は、見守っているほかない。片刻も眼を離さずに。それしか仕方がない。私は芹さんと、そんなふうな内心を隠しもって、つきあっていた。芹さんはそこいらを感じてくれていただろうか。」
なお、ラスト近くに、「常識」という機械(人工知能)と将棋を論じた小林秀雄の論考があり、その次に「ボナンザ戦を受けた理由」という渡辺明のエッセイが・・・。何ともいえない気持ちに。一体、この激震、どうなるのだろうか。
読書の軌跡
371ページ | 2016/11/07 22:02:54 |
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