真鶴 (文春文庫) [196回参照されました]
とくこさん
がこの本を手に取りました。とくこさんは、これまでに46冊の本を読み、11,505ページをめくりました。
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本の紹介
| 100% [全271ページ] |
状態 | 読み終わった! 2016/08/07 12:50:18更新 |
著者 | 川上 弘美 |
ブックリンクされた本
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評価
未評価感想
この方の本棚には川上 弘美の本がもう2冊あります
読書の軌跡
6ページ | 2016/04/10 09:37:46 | 「朝食は」と聞く息子の声に、おぼえがあったが、あきらかに初対面である、知ったものの声に似ているにしても、それが誰なのか思いだせない。出される声そのものでなく、声の奥底にある揺れのようなものに、おぼえがあるのだった。 |
16ページ | 2016/04/10 09:50:38 | 「砂」という名字を不思議に思った。昨夜は何も思わなかったのに。響きが不思議というよりも、どのような名前がその下に来たならぴったりとくるのか、それが不思議だった。 |
13ページ | 2016/04/10 09:57:07 | 百が生まれたばかりのころ、乳を吸われながら、近い、と思った。この子となんと近くにあるのだろう。腹の中に宿していたときよりも、なお近いように思った。可愛いだのいとおしいだの、そんなものではなかった。ただ、近かった。 |
17ページ | 2016/04/10 10:05:05 | もてあそぶほど死は遠くにない。すぐそこにあるというものでもないけれど。 |
39ページ | 2016/04/10 16:28:46 | 百には、やわらかな部分しか、さらせないのだ。かたくおおって守ればいいものを。むかし、百を自分のからだが所有していたことをおぼえていて、へだてをつくって拒むことができない。 |
58ページ | 2016/04/10 17:16:34 | 言いながら、母はのびをしている。口ぶりはこころぼそそうだが、からだは春に向かってひらいているのがわかる。のびをする手の先の力が、つよい。 |
67ページ | 2016/04/10 17:29:16 | ひととき、本棚の奥にしまいこんだ。見えないように。礼を、見知らぬものと思ったことは一瞬もなかったのに、日記を読んだとたんに、見知らぬものになった。顔も、思いだせなくなった。においも。肌のここちも。声も。 |
68ページ | 2016/04/10 17:34:25 | いなくなったからではない。日記を読みながら、自分の目ではなく、礼自身の目で、ここいらにあるものを見てしまったからだった。他人の目でここいらを見るとは、なんときもちわるいものだろう。以来、日記の字を読むと、刺されるようになった。痛い。いやだ。きらいだ。礼が。わたしとちがう。わたしから、へだたっている。けれど、へだたっていることは、ほんとうは、知っていた。知っていたのに、思い知らされると、びっくりする。火にふれて飛びのいたときのように、感情がゆすぶられる。 |
83ページ | 2016/04/22 14:08:39 | 「いないから、嫉妬する」青茲は言った。「いないのに、ついてくるから、嫉妬する」青茲はいいなおした。 |
96ページ | 2016/04/23 15:08:43 | 七月か。青茲は考えている。ちょっと、予定を調整してみようか。しばらく、返事は待っていてくださいね。それからすぐに青茲は行ってしまった。自分から去るときは、ためらいがない。わたしが帰ろうとすると、惜しそうにするのに。 |
213ページ | 2016/04/26 22:11:17 | かるく、抱かれた。近くなったのに、遠ざけられているようだった。抱かれているのに、抱かれているから、さみしかった。 |
271ページ | 2016/08/07 12:50:18 |
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