太宰治の辞書 [3820回参照されました]
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本の紹介
100% [全215ページ]
状態 読み終わった!
2015/10/07 00:54:47更新
著者 北村 薫 ブックリンクされた本
評価
未評価感想
本を読む人の人生と読まない人の人生。その間には深くて長い河がある。どうしてもそう思ってしまう。本書は、そんな本を読まざるを得ない側にいる「私」と「落語家の円紫さん」シリーズの17年ぶりの最新刊。女子大生であった「私」も中年の書籍編集者となり二人の子を持つ中年となった。。
初期の「空飛ぶ馬」「夜の蝉」には、女子大生の「私」の本を読むことへの矜持や、恋や家族・友人との関係、人の闇へのとまどいが、これを温かく見守る人生の先達としての円紫さんの視線とともに、何ともみずみずしく描かれていた。そして、そこで出てくる落語の題名、マニアックな作家名も楽しく、何とも魅力的なシリーズであった(なお、自分はこれをきっかけに落語にはまることになる)。
それが何だか、そのうち、「私」の名を借りた、北村薫自身の文学上の発見披露シリーズになってしまい、んんん・・・と思っているうちに、一端終止符。
そこで、17年ぶりに再会した本書である。やっぱり文学上の発見(太宰治のロココの認識?)に終始してしまっているのは残念であるが、親友で高校の先生となった正ちゃんの「高校生の時に君と出会っていたらあげた本だから」と太宰の「女生徒」のくたびれた文庫をあげるやりとりには、自分の一番好きでたまげた太宰の小説が「女生徒」であることもあり、じーん。
とはいえ、年を経て安定感を増した「私」に面白みはない。本シリーズの良さは、本読みで理屈に勝る「私」の若さによるとまどいや揺らぎにあったのだと改めて思い知らされた(とりわけ、本読みの妹である「私」が美しいだけが取り柄だと知らず知らず見下していた姉の心情を知り心が揺れる「夜の蝉」は姉妹ものの大傑作だと思う)。
読書の軌跡
215ページ | 2015/10/07 00:54:47 |
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