ガリレオの苦悩 (文春文庫) [155回参照されました]
あおみさん がこの本を手に取りました。あおみさんは、これまでに174冊の本を読み、67,684ページをめくりました。
本の紹介
100% [全384ページ]
状態 読み終わった!
2013/05/25 02:40:58更新
著者 東野 圭吾 ブックリンクされた本
-評価
★★★★☆感想
本書はガリレオシリーズの4作目である。構成は1作目「探偵ガリレオ」、2作目「予知夢」と同様に、5つの短編から成る。
しかし先の2作とは訳が違う。
本書は間違いなく、3作目である「容疑者xの献身」を継いでいる。
1話目の“落下る”において、湯川が事件の解決に気を傾けつつも、親友石神のことを引きずり「もう捜査には関わらない」と切り捨てる場面からは、好敵手を失った湯川の無念が伺える。
2話目の“操縦る”では恩師が殺人に手を染めるのだが、そんな最悪な手段をとらなくても自分たちを頼ってくれれば、と湯川は恩師に告げる。そこから、自分の力の無力さと犯罪心理の恐怖を湯川は思い知る。
しかし、科学を殺人、犯罪に使う輩はやはり許せない。5話目の“撹乱す”では、同じ科学者として心から軽蔑しこれまでの湯川からは少し想像し難い行動に出る。例えば、犯人への挑発だ。内海や草薙から口止めされていたにも関わらず、マスコミの取材をわざと受け犯人をおびき寄せる。この行動から、やはり彼の中には正義感が確固たるものとして存在しており、それがこれまでの湯川と変わらないことを証明している。
こうして前作との繋ぎを意識して読めば、本作は傑作ではあるのだが、いかんせん湯川の立ち直りと言うべきなのか、そうした人間の心に焦点を合わせているのでトリックや事件の複雑さは物足りなかった。したがって星は4つとする。
しかしこれ程までにシリーズを読み続けていて飽きない作品は珍しい。
松岡圭祐 著の「万能鑑定士」シリーズ以来である。
本作では内海薫という女性刑事が現れたが、これからの彼女の行動も楽しみだ。重ねて、湯川との関係も。
1.落下る(おちる):マンションの一階にいながら上階の者を落とす。→これは勘違いで一室で口論になり鍋で頭を殴り一階に降りたとき、殴られた女が自殺した、というもの。
2.操縦る(あやつる):離れで日本刀のような長い刃物に刺され、さらに離れを燃やされて死亡。→爆発による金属の変形を利用。
3.密室る(とじる):密室だった部屋の住人が離れた崖の下で死体で発見。→密室ではなくホログラムを使って鍵が閉まっているように見せかけた。
4.指標す(しめす):老人と犬が殺され家から金が奪われる事件が発生。犬の死体をダウジングで見つけた少女がいた。→その犯人が知人だと知り、死体がどこにあるか何となく勘付いていた。ダウジングについての真否は不明。
5.撹乱す(みだす):殺人事件をいつでも起こせるという「悪魔の手」の持ち主による湯川への挑戦。→特定の周波数の音を超指向性スピーカーによって、離れた所から特定の人物にだけ聞かせることで平衡感覚を奪う。
この中では2「操縦る」と5「撹乱す」が面白かった。特に「撹乱す」が。
読書の軌跡
384ページ | 2013/05/25 02:40:58 |
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