プラチナデータ (幻冬舎文庫) [281回参照されました]
あおみさん がこの本を手に取りました。あおみさんは、これまでに174冊の本を読み、67,684ページをめくりました。
本の紹介
100% [全493ページ]
状態 読み終わった!
2013/03/22 01:43:29更新
著者 東野 圭吾 ブックリンクされた本
-評価
★★★★★感想
なんというか、とても面白かった。起承転結がしっかりとしていて、個人的には大いに腑に落ちることができる結末であるし、個性豊かで魅力的な人物ばかりである。したがって読んでいて飽きることはない。これは、もしかしたら著者の優れた構成力、文章力の賜物なのかもしれないが。
本書を手に取ったきっかけはやはり、映画化である。しかし、恐らく内容は本書と異なるのではないか、と考える。なぜなら、映画で用いられる「プラチナデータ」の意味と、本書で語られるそれの意味とは、違っているだろうと思うからだ。
映画では恐らく、"全国民のDNAデータを結集した情報の宝庫"という意味合いなのであろうが、本書のそれは"万一、DNA捜査に引っかかるとまずい、権力をもった立場の人間たちのDNAデータ"と言ったとこだろうか。とにかく神楽が完璧だと豪語するこの優れたシステムにも、権力が介入していたのだ。いつの時代もそうである。
しかし、これが悪いことだとは思わない。立場の高い人間は守られて当然である。だからと言って、それを保証に犯罪を起こすのは言語道断であるが。
天才数学者であり、DNA捜査システムの開発者でもある蓼科早樹が「プラチナデータ」の秘密を露呈するために作った「モーグル」というプログラム。彼女はこうしたことをする人物だっただろうか。先天的に顔に刻まれた紫色の痣。これによって彼女は心を閉ざし、その代わりと言うべきか天才的な頭脳を得た。その能力を見出した神楽は彼女に近づき、DNA捜査システムの開発へと協力を要請した。
僕は彼女が彼女のままだったら、こんな誘いには乗らなかっただろうと思う。では、なぜ彼女は協力したのか。それはひと重にリュウのお陰だろう。彼らは互いに惚れたのだろう。見たものしか信じないリュウの眼には、早樹はスズランのように映り、早樹には外見でものを判断しないリュウが魅力的に見えたのではないか。早樹は本文にもあった通り、心優しい乙女らしい心の持ち主であった。
しかし、上からの圧力には抗うことはできず、「プラチナデータ」を隠すように設計したが、自身の行為の愚かさ、過ちに気づき「モーグル」を開発した。が、それが邪魔な、所謂権力を持った人間に殺された。
やはり遺伝子だけでは人間の人生は計れない。計れないし、予測もできない。人間、もしくは生物が優れているのは「心」があることだし、同時にそれこそが機械に真似できない唯一の部分でもある。
DNAが管理される世の中には賛成であるが、本書のような権力の横暴があってはならない。
具体的な、近未来の話だった。
ネタバレ
なぜ神楽龍平がDNAプロファイリングにより犯人だとされたか。
→リュウが会い、描いていた少女であるスズランは、実は蓼科早樹であり、リュウの人格が表出している時だけ彼女は監視カメラを欺きアトリエに赴いていたから、彼女の衣服にリュウの、あるいは神楽の毛髪が付着していたから。(早樹の豊満な身体つきは、リュウにはスズランのような細身の身体に見えていた。)
プラチナデータとは?
→上に書いたとおり。
モーグルとは?
→プラチナデータを隠すシステムを清算するプログラム。
水上教授の目的は?
→電トリと呼ばれる脳を麻痺させる機械をさらに強力にさせることで、人間を操ろうとした。一連の殺人はそのための実験の結果。
読書の軌跡
493ページ | 2013/03/22 01:43:29 |
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