トルコ民族主義 (講談社現代新書) [44回参照されました]
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本の紹介
100% [全242ページ]
状態 昔読んだ
2010/09/26 12:00:04更新
著者 坂本 勉 ブックリンクされた本
評価
★★★★★感想
普通、トルコ民族と聞けば、アナトリア等を国土とするトルコ共和国のことを思い浮かべますが、元来トルコ系民族はモンゴル高原に居住しており(中国史に記録される鉄勒(てつろく)や突厥)、西へ移動しながら、ウイグル、中央アジア、コーカサス、アナトリア等に広がっていったものです。
トルコ系民族は移動しながら、各地の先住民族と交じり合い、風貌には大きな違いがあり、一見して同一民族とは見えませんが、言語的には同系統に属しており、文化的・宗教的な共通性も見られます。
本書は、トルコ系民族の内の中央アジア、アゼルバイジャン、アナトリアに焦点をあてながら、各地域における民族形成の歴史、特に民族主義の展開について解説しています。
一方各地域での民族主義に対して、トルコ系民族全体を統合するパン・トルコ主義は、近代になり、言語学的・歴史学的な研究の進展を背景として、理念として生まれ、一定の影響を与えては来たものの、現在に至るまで大きなうねりとなることはありませんでした。
アゼルバイジャンや中央アジア各国は、石油やウランなど豊富な天然資源を有するとともに、ソ連解体後の紛争や政治的混迷が続く中、中東イスラム地域に隣接し地政学的・経済的な重要性を増してきています。
これら諸国に対して、相対的に経済の発展したトルコ共和国は経済的な影響力を強めており、あらためて言語的・文化的共通性が認識されてきています。
ともすれば、日本人の知識は、トルコ共和国と西(EU)との関係に偏っているますが、東(アゼルバイジャン・中央アジア)とも政治的・経済的繋がりを強めるトルコ共和国は、政治的・経済的な要として重要な位置を占めています。
パン・トルコ主義自体が、大きなうねりを形成する可能性は高くないものの、トルコ系民族の広がりと連携は、世界の経済、政治にとって注目すべきことであることが理解されます。
読書の軌跡
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