トゥバ紀行 (岩波文庫) [42回参照されました]
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本の紹介
100% [全310ページ]
状態 昔読んだ
2010/09/26 11:41:29更新
著者 メンヒェン=ヘルフェン ブックリンクされた本
評価
★★★★★感想
トゥバとはモンゴルの北に1921年から1944年までの23年間だけ存在した独立国で、その後はソビエト・ロシア共和国の自治州となった国です。この国に1929年入国したオーストリア出身の民俗学・考古学者メンヒェン=ヘルフェンの貴重な記録です。
トゥバ人はテュルク系の言語を話すテュルク系民族ですが、モンゴルの支配を長く受け、宗教もモンゴルの影響からラマ仏教が信仰されていましたが、シャーマニズムも根深く庶民に信仰されていました。
その後トゥバは、清朝と帝政ロシアが領有権を争い、当初は清朝が支配下に置きましたが、やがて帝政ロシアが領有することになります。ソ連が誕生すると、ソ連の意向の下、一旦トゥバ人民共和国として独立しますが、これは、最終的にロシア共和国に編入させるためのステップに過ぎませんでした。ソ連の強い監視下にあって、外国人の入国が不可能であったその短い独立国期間に、幸運にも入国できた唯一の外国人が著者でした。
トゥバは、モンゴルの強い影響を受けてはいますが、その基盤にはテュルク系の遊牧文化が残り、トゥバ独自の素朴な文化・社会を形成しています。しかし、人々の暮らしは非常に貧しく過酷な様子が様々記されてます。一方、ソ連による植民地支配の様子も記録されています。例えば列車内で、KGBの工作員がわざと政府を批判する発言を大声で発し、同意するものがいないかと様子を窺いますが、事情を察している乗客達は無視を決め込みます。
本書は、ソ連という大国の植民地として翻弄され、過酷な状況におかれる少数民族の実態と、社会主義者である著者が、ソ連の帝国主義的植民地主義を世界に告発した貴重なルポルタージュとなっています。
なお、トゥバは自治州としてロシアに編入されますが、その後自治共和国となり、さらにソ連崩壊後は、ロシア連邦を構成するトゥバ共和国となり独立性を取り戻しつつあります。
読書の軌跡
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