虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) [343回参照されました]
机龍之介さん がこの本を手に取りました。机龍之介さんは、これまでに149冊の本を読み、60,008ページをめくりました。
本の紹介
100% [全432ページ]
状態 読み終わった!
2010/06/11 20:45:06更新
著者 伊藤計劃 ブックリンクされた本
-評価
★★★★☆感想
「悲しみに胸を塞がれてはいたが、残酷なことにぼくにとってこれは突然の不幸などではなく、世界というものがそうあるべき唐突さを、またあらためて剝き出しにしたにすぎなかった。」
不条理劇に終始している。村上春樹の小説にでてきそうないまいち煮え切らないクール風の主人公が、罪の意識を背負って許しを求めて戦場を渡り歩く。暗殺対象の恋人に会いたいから。
なぜ彼女でなければならなかったのか?なぜ母親の人生で主人公は登場人物にならなかったのか?虐殺の文法って具体的に何?最後に主人公がアメリカで虐殺劇を発動させた理由は?みたいな疑問が残る。だがしかし、多くの問題については、理由はない。だから不条理劇。あえて言えば「世界というものがそうあるべき唐突さを、またあらためて剝き出しにしたにすぎなかった」からで、「太陽がまぶしかった」のと同じ程度の理由だ。
その意味では、カフカ的。エンターテイメント性を持った自分の存在も含め、世界は無慈悲で不条理だという現実を突きつけていた。
「仕事だから仕方ないという言葉が虫も殺さぬ凡庸な人間たちから、どれだけの残虐さを引き出すことに成功したか、きみは知っているのかね」
ところで小松左京がこの小説を落選させた理由を見て感じた。虐殺の文法がなんだかわからないけど、フリーソフトを扱うみたいに簡単に扱える。ここに説明求めるのは間抜けじゃないか?だって、私たちはリモコンのスイッチを押せば、TVのチャンネルは変わることを理解しているわけだから。
読書の軌跡
1ページ | 2010/05/26 20:02:50 |
432ページ | 2010/06/11 20:45:06 |
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