みみずくは黄昏に飛びたつ [18586回参照されました]
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本の紹介
100% [全352ページ]
状態 読み終わった!
2017/05/03 14:06:17更新
著者 川上 未映子 ブックリンクされた本
評価
未評価感想
川上未映子をインタビュワーとする村上春樹のボリュームのあるインタビュー。「MONKEY」でのインタビュワーぶりがあまりに素晴らしい!思っていたら、村上春樹自身もそう思っていたようで、自身のリクエストにより本書が企画されたらしい。深く、確信をついた質問をして、村上春樹の興味深い発言を引き出しまくっているし、村上春樹の小説の女性の扱い(行動する男性の付属物、導く存在でしかない女性)など、相当に切り込んでいっているのも、驚くほどだ。そして、「騎士団長殺し」を題材に、はじめのキーとなるアイディア(3つしかない)が、どのような手順で書き進められていったのかが、具体的に、語られてるところがとても面白い。
以下印象的だった部分(意訳)
・騎士団長殺しは、私と免色の関係性、冒頭のシーンは、「グレートギャツビー」のオマージュ(確かに!)。
・書いてみたら、結局、「私」ではなく「免色」の物語だった(その通り。最後に記憶に残るのは、「免色」)。
・語られているものはいつも同じものかもしれないが(井戸、壁抜けなど)、文体が変わればそこから出てくるものは自ずと異なってくる。それでよいのではないか。自分は文体ついては自信があるし、常に野心をもってやってきた(評価はされないが)。
・自分は中編で実験的な試みをしてきた。「ノルウェイの森」はリアリズム小説を書ききる、セックス描写を頑張る(!)、「スプートニク」はこれまでの文体の総決算、「アフターダーク」はシナリオ的な書き方(現に初めは台詞しかなかったしい)、「多崎つくる」はグループを書く、という試みをした。しかし、得てして、酷評される(確かに、私もその4編は全く好きではない)。
・自分は、自意識の部分(地下1階)より下層にある集合的無意識的(地下2階)なものから引き出して、文字のない古代からある物語を語り部として紡いでいる。ただ、その部分は、ナチスやオウム真理教など邪悪な物語として機能してしまうこともあるから、「良き物語」を紡いでいくよう注意しなければならない。時間が、結局、邪悪な物語を駆逐するから、「物語の力」は信じていたい。
村上春樹の言説に触れるといつも思うことではあるが、村上春樹の作家としての誠実性、覚悟を改めて認識させるインタビュー結果であった。なお、自分が村上春樹の小説が他の小説と違っているのは、それが自分が好きな村上春樹であれ、嫌いな村上春樹であれ、とにかく、どのエピソードもシーンも印象が鮮やかで、一読しただけで、それも何十年たったあとでも、「あの場面のあのエピソード」と再現できてしまうことにある。それが村上春樹の文体の鍛錬の結果なのか、集合的無意識を刺激されたからなのかは分からないが、外国の読者も惹きつけているとすればその部分なのではないか、と思う。村上春樹の作品を、場合によりくさしつつも、「信用」している読者として、最後の作品まで付き合っていきたいと思う。
読書の軌跡
352ページ | 2017/05/03 14:06:17 |
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