ヤノマミ (新潮文庫) [839回参照されました]
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本の紹介
100% [全375ページ]
状態 読み終わった!
2017/02/26 23:18:03更新
著者 国分 拓 ブックリンクされた本
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(p84)彼らは年に一度しかハナナリゥ(大きな川)に漁に行かない…食べ物がまだあるのに、どうして狩りに行かねばならないのだ?と同じ哲学によるのではないか…それは経験則(森の資源を枯渇させない知識や決まり)ではなく、彼らの価値観であるように思えた。
(p297)シャボリ・バタは「ナプの中にはいいナプもいる」と言った…そこには、微妙な諦めが滲んでいて、聞くのが辛かった…長い流浪の果てに、「文明」を拒絶し「文明」と戦うことより、集団が危険なく安らかに暮らせることを優先したに違いなかった。それは、苦渋の決断だったはずだ。父が死に、母が死に、子どもが死に、仲間が死ぬ。悲劇が続く中で、シャボリ・バタは「文明」との共存を選択した。
(p341)ワトリキでは、「文明」への依存が進む一方で、「文明」への憎悪も深まっている…依存は、時に依存する側の人間を卑屈にさせるだろうし、それが憎悪に変わっていくことも想像に難くない。今後、その「依存」と「憎悪」は、ともに大きくなることはあっても、なくなることはないように思われた。
(p345)彼らは日本の歌(ふるさと、赤とんぼ)ではなく、沖縄の歌(島唄)に何かを感じた…辺境にこそ文化の本質が残るという言葉を思い出した。
(p349)ヤノマミの世界には、生も死も、聖も俗も、暴も愛も、何もかもが同居していた…僕たちの社会はその姿を巧妙に隠す。虚構がまかり通り、剥き出しのものがない。
(p351)おそらく、彼らを否定してしまえば何も起きなかったはずだ。彼らは違うのだ、僕たちとは違うのだ、と切り捨てていれば、心身が壊れることはなかったに違いない。でも、そうは思わなかった。むしろ、同じなのではないか、と思った。
(p359)〈事件〉は本当にニュース=新しい情報だったのか。実際は、森の中で恒常的に置き続けてきたこと、すなわち「日常」だったのではないか、と…ワトリキの人たちが悲劇を語る時、いつ起きたか何も語られない…それは西洋のような客観的な時間軸がないことも一因なのかもしれないが…侵入、収奪、虐殺、絶望、逃亡。五百年以上前に「文明側」の人間がブラジルにやって来て以来、同じ事ばかりが何度も起き続けてきたからではないか。私たちから見れば遠い昔の出来事でも、彼らからすれば「ずっと続いてきた日常的」だったからではないか。
(p371)精霊のまま天に返す手間のかかる作業はその手間が思考を止めてくれる面と、決まった形式があるからこそ、遂行できるという面がある…その形式のなかで、女はなんとか自分を保てるのではないだろうか。
読書の軌跡
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