セロニアス・モンクのいた風景 [7494回参照されました]
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本の紹介
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2014/11/03 21:26:33更新
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村上春樹は音楽について、とりわけ、敬愛するするジャズについて語るとき、一番、素直で瑞々しい彼自身が自ずと出てくるように思う。本著はセロニアスモンクに関するエッセイの翻訳ものであるが、一章だけ、表題と同一の自身のエッセイが掲載されている。このエッセイは、「ポートレイトインジャズ」(名著!)に掲載されたものを改訂したもの(名文)であるが、加筆された箇所自体が現在の村上春樹の心情を率直に物語っていると思う。たとえば以下のとおり。
【22年前】「誰かにモンクの音楽のすばらしさを伝えたいと思っても、言葉で適切にあらわすことができなかった。それも孤独のひとつの切実なかたちなのだ、と僕はそのとき思った。悪くない、寂しいけれど、悪くない。僕はそのころ、いろいろな孤独のかたちをひたすら集めていたような気がする。山ほど煙草を吸いながら」
【今】「まわりにいる人々にモンクの音楽の素晴らしさを伝えたいと思っても、言葉でそれを具体的に表すことができなかった。本当に大事なものを、本当に深いものを誰かと共有するためには、言葉はむしろ余計なものになってしまう。僕はそれを痛いほど実感した。しかし、そうだとして、言葉を抜きにして、僕らはいったいどうやって人の心に近接することができるのだろう?そういうこともたぶん孤独のひとつのかたちなのだろうと僕は考えたものだ。それはそれで悪くない。僕は当時、20歳になったばかりの時期、いろいろな孤独のかたちをひたすら拾い集めていたような気がする。いつか何かのかたちで、人にうまく伝えることができるようになればと思って。山ほど煙草を吸いながら」
なお、この本の装幀は本来、盟友・安西水丸によってなされるはずだった。その代わりに、和田誠が安西水丸のモンクのスケッチを活かして、安西水丸がモンクの煙草に火をつけてあげたシーン(実話)が表紙になっている。村上春樹の愛したモンクについての彼なりの追悼本であり、よき相棒であったであろう安西水丸の追悼本にもなっている。
読書の軌跡
301ページ | 2014/11/03 21:26:33 |
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