揺れるユダヤ人国家―ポスト・シオニズム (文春新書) [23回参照されました]
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本の紹介
100% [全222ページ]
状態 昔読んだ
2010/09/26 12:05:03更新
著者 立山 良司 ブックリンクされた本
-評価
★★★★★感想
イスラエルのユダヤ人と聞くと、一神教たるユダヤ教を深く信仰し、「約束の地、パレスチナ」をめぐっては、パレスチナ人と激しく対立を続ける、一致団結した人々といったイメージがあるのではないでしょうか。しかし、実際のイスラエルは多様化が進み、むしろ分断されて混迷を深めていると言っても良い状態です。
分断の第一は、宗教的/世俗的の対立です。宗教への回帰(原理主義的とも言える)現象が現れる一方、世俗化、脱宗教化が進んでもいます。第二は、スファラディー・ミズラヒ(アジア・アフリカ系)とアシュケナジー(ヨーロッパ系)のエスニックな対立です。第三は、中東和平をめぐるイデオロギー的な対立です。占領地の返還に反対する大イスラエル主義と、占領地を返還して和平を達成を支持するグループに分かれています。
また、ユダヤ系アメリカ人は、イスラエルの強力な支持母体ではありますが、イスラエルのユダヤ人との間には微妙なギャップが存在します(「ガラス越しのキス」)。アメリカのユダヤ人の方がよりイスラエルを無批判に支持する傾向があり(遠隔地ナショナリズム)、対パレスチナではより強硬な態度が支持されるます。しかし、現実的な対応を迫られ、和平に向けて多様な意見を戦わせているスラエルのユダヤ人にとって、アメリカのユダヤ支持は歓迎すべきことばかりではありません。アメリカのユダヤ人のフィルターを通して見ることの多い日本人としては、この点は、大いに注意べき事だと思います。
このように、決して一枚岩ではない現実のイスラエルのユダヤ人の姿を丁寧に解説する本書は、荒唐無稽な「ユダヤ人陰謀説」も含めた日本人のユダヤ人観を正すものであり、今後の中東和平を考える上でも重要な視点を提供しているものと思います。
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